2歳児が、あいまいなぼくらはたびにでようぜ、と歌う
「くるり」といえば、1984年生まれの私たちの世代にとってはものすごく「あの頃」を感じさせるバンドだと思う。
私はそこまで多く聴いていたわけではないのだけど、それでも「ばらの花」を聴くと、ちょっと切なさで息苦しくなる。
最近、驚くことに2歳の息子がこの歌をよく歌っている。
始まりは「ムジカ・ピッコリ―」というEテレの音楽を紹介する番組だ。
音楽が失われた「ムジカムンド」という架空の大地を舞台に、
音楽の記憶を宿した「モンストロ」を探し出し、音楽の記憶を蘇らせる。
それを生業とする「ムジカドクター」やムジカドクターを目指す少年少女たちの物語だ。
独特な世界観で繰り広げられる、1回10分程度のストーリーの中で、楽器や曲、歌などの切り口でストーリーが進み、最後には登場人物たちがその日の曲を演奏して、歌う。
これまでのシーズンでは浜野謙太やムーンライダーズの鈴木慶一がムジカドクター役を務めたり、オダギリジョーが出てきたりする。最新のシーズンにはオカモトズのオカモトショウや東京事変のギタリスト長岡亮介などが出ている。本気、めっちゃ本気。
それから、豪華な出演陣だけではなく、みずみずしい少年少女たちの歌や演奏もすごく良い。
息子は「ピアノのやつ」と呼んで毎週楽しみに見ている。
そして4月から始まった新しいシーズンの第1回のテーマ曲が「ばらの花」だったのである。
息子はめちゃくちゃに気に入って、最低でも30回は録画をみている。
ちょうどくるりの「ワンダーフォーゲル」のレコードがうちにあったので、かけてみると、イントロが流れた時点で「あいまいなぼくらだっ!」と小躍りしていた。
それ以来、この曲を聴きたいときには「あいまいなぼくらは~?」と疑問形で聞いてくる。
歌うことが好きなようなので、お出かけに行くときでも、家で遊んでいる時にも、よく「あいまいなーぼーくーらーはーたーびーにーでーよーおぜー」と歌っている。
うまく聞かせようという気負いもまだなく、歌詞の意味も分からないので、「おもちゃのチャチャチャ」とか「チューリップ」と同じようなトーンで声を張り上げて、両手をぐるぐる回したり、体を揺らしたりしながら元気に歌う。
そして私は、どんだけ好きやねんバラの花と笑いながら、いつか始まる息子の旅を思って、いつもちょっと泣ける。